Tuesday, January 10

ストックホルムの密使 - 佐々木 譲

NHK終戦スペシャルドラマ『百合子さんの絵本/陸軍武官小野寺夫婦の戦争』の
できがおそろしく良くて、関連書籍を読んでみようと手に取った。

NHK©

ちなみにNHKのこちらの番組については、

史実に則した物語を、
香川照之&薬師丸ひろ子のベテランが、実に見事に形にしていた。

実は先般あらためて「失敗の本質」を読み、
戦いにいかに負けていくかについて、追想していたタイミングだったので、
この物語が描き出した大戦における情報線的側面での敗北は
心に刺さるものがあった。



書籍の方はというと、
冒険活劇的要素を加え、欧州~ソ連~日本にかけて
繰り広げられる密使攻略作戦が中心に描かれる。

この点は、著者の創作ではあるものの、
史実を拡大解釈した上での内容ということが最後に語られ、
想像力を掻き立てられる内容となっている。

全体をとおして、特に印象に残ったのは、
「どんな情報も、受けとる側に受けとるための感受性と認識がなければ、ただの雑音にしか聞こえません。~以下略」
という物語に登場する陸軍書記官が最後に語る言葉である。

このセリフこそが、本書が見出した
「なぜ、あの日ストックホルムからの情報は軍上層部まで届かず、吟味されなかったか」の答えの
核心かと思った。

軍上層の会議風景が何度も登場するが、
空気が支配するあ・うんで、なんとなく結論が決まっていく
日本独特のスタイル・・は、
そこに仔細に描かれないが確かに存在する
現場の数千数百万という命の重みと対比して、
あまりに不釣り合いであり、71年も前のこととはいえ、憤りを覚えずにはいられなかった。

当時の日本の暗号はそのほとんどが
解読されいたという。

そして、欧米各国(アメリカ・イギリスを中心として)の旧連合国側には
いまも研究用としてその解読文がきちんと保管されている。

ちなみに日本はというと、ポツダム宣言受諾後、
軍部解散を前に証拠隠滅を図るため、焼却処分をしてしまって、
戦争に関する重要な情報の一部は、もうすでにこの世にはないらしい・・

情報軽視。

戦争がなぜ、はじまり、
なぜ負けたのか、ということは
さまざまな側面で議論されつくされるべきことと思うが、

少なくとも情報の重要性に早くから気づいた者が、優位に立つ
20世紀中頃にして、早くも、情報優位性が問われていたに
違いはない。


大戦の話を読んでいて、
ふとまちなかに出ると不思議な感覚になる。

さまざまな国籍の外国人旅行者が東京を観光している様子や、
多くの人が少なくとも文化的な生活をしていることなどが
眩しく映る。

平和はかなったんだと、
少しは維持されているんだと、
なぜか、しみじみ思ってしまう。